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[編集] 昇圧チョッパー (DC-DCコンバーター)

Mar 2014

電験では直流チョッパの基本も試験範囲となっているため、以前勉強したのですが、非常に簡単な回路であったため、いつか実験しようと思っていました。パーツが揃ったので試してみることにしました。

↓当時のノート

Dcdc denken.jpg

[編集] 回路

回路図を以下に示します。

Dcdc Boost1.JPG

NチャンネルのMOS FETは高速スイッチの役割を果たします。私が実際の回路で確認したいと思っていたことは、「スイッチする最適な周波数」はどのくらいなのか?ということです。最低限必要な周期は、過渡現象で計算したのと同様に時定数から求めることができます。

この回路では、Lと直列になるRはFETのON抵抗となります。ON抵抗 Rdsは 0.65 Ωですから、時定数はτ=L/R=120[μH]/0.65=185[μs] です。過渡状態が 5τでおさまるとすれば、f=1/T=1/10τ=540[Hz]が最低限の周波数となります。これ以下の周波数では、単に電源電圧がFETにかかる時間が長くなり、ダメージを与え、効率も低下します。

[編集] 出力電圧

出力電圧 Vout は Vout = E/(1-d) [V] (d:デューティ比) で計算できます。L のインダクタンス値や、スイッチングの周波数がこの式には含まれていないのが不思議な感じですが、これはRL積分回路の電圧値の計算式

  • Von = E(1-e^(-t/τ))
  • Voff = Ee^(-t/τ)

はコイルの電流ON/OFF時で対象な形となっているため、デューティ比0.5のときは相殺されるということになります。したがって、デューティ比のみが出力電圧を左右するパラメータとなるようです。

手持ちの信号発生器はデューティ比は50%固定のため、出力電圧は Vout = 10/0.5 = 20[V] ということになります。

[編集] 実験

使用パーツ

Dcdc parts.jpg コイルは大きい方が 120μH。小さいコイルは32μH

電圧は、入力10V時で出力20V。計算値とぴったり! (周波数 f=55[kHz])

Dcdc boost2.jpg

スイッチ周波数を変えると、出力電圧も変化します。周波数 f - 出力電圧 v は以下のようになりました。

Dcdc Boost v-f.JPG

FETの温度変化(と思われる)により、出力電圧はあまり安定しておらず、先ほど20[V]だった電圧は、このf-v測定時は26[V]にもなっていました。が、最大電圧となる周波数は同じで約 55[kHz]です。また、最低周波数として算出した 540[Hz]ですが、このグラフでは1[kHz] がその周波数に該当するような結果となっています。原因はわかりません。

[編集] まとめ

実験結果として、出力電圧はデューティ比だけでなく周波数にも左右されることがわかりました。TOREX社の資料によれば、周波数によって、最大効率、効率が最大となる出力電流の大きさ、が変わるということですから、用途によって周波数を選ぶということになるようです。コイルのインダクタンス値や出力電圧で一意に周波数が決まる、というものではないことになります。

なお、この回路で出力に負荷をかけると、小さな負荷でも電圧がドロップしてすぐに10V近くになってしまいます。定電圧電源とするにはデューティ比を調整して電圧を一定に維持する必要があるようです。

[編集] 参照

以下のページを参照させていただきました。

[編集] 追記1

コイルを 32[μH] に変更して同じ回路を試しました。時定数が短くなったため、最大電圧となる周波数は上昇すると思われます。実際には Vout = 12.5[V] @f=1000[kHz]となりました。コイルのインダクタンスが小さいと、出力電圧は小さくなってしまいました。このあたりの現象は感覚的には理解できますが、計算式としては現れてきません。もう少し勉強が必要です。

[編集] 追記2

以前作成した秋月のXR2206使用ファンクションジェネレーターキットではデューティ比を可変できることを思い出しました。

Dcdc xrkiban.jpg

しかし、デューティ比可変モードで周波数を 60[kHz]近辺に設定しようとすると、出力波形はちゃんとした方形波になりませんでした。100[Hz]程度であれば問題ないのですが、高い周波数ではこのキットではNGなもようで、断念しました。

↓こんな波形入力ではまともに昇圧は不可能

Dcdc xr2206.JPG

[編集] 追記3

AVR によるPWM出力が行えるようになったので、これをスイッチ入力として試してみることにします。その前に、AVRからの出力は入力として弱いようなので、TRで増幅が必要です。以下がTRを追加した回路です。

Dcdc circuit2.JPG

この回路でとりあえずAVRは62KHz 出力、Duty=0.5に設定し、方形波を入力してやりました。昇圧回路への電源のスイッチを入れたとたん、昇圧出力の電圧計が振り切れました!え、と思って、AVRではなく最初に使っていた信号発生器をつないでみると、やっぱりすごい昇圧しています。

Dcdc boostup.jpg ←わずか1V入力でも、20V近くまで昇圧!なんで?

今まではゲートへの入力信号が足りていなかったようです。トランジスタ1個追加してこんなに変わるとはびっくりしました。さらに、最大出力電圧が得られる周波数はかなり低くなり、5.6KHz 近辺になりました。また、負荷を接続したときの振る舞いが変わりました。電圧はドロップしますが、入力電圧まではドロップせず、ある程度の電圧で負荷に電流を流すことができるようになりました。3V 入力で負荷に5V、100mA流すことができます。

Dcdc load1s.jpg ←単3x2本の市販の携帯充電器もどきもこれで可能

この状態で、Duty 比 = 67% に変更してちょっと試してみました。しかし、入力電流が増えるだけで出力電圧ドロップはあまり改善されませんでした。Duty 比についてはまた後日やりたいと思います。

[編集] 追記4 (インダクタ)

2014/3/11

インダクタをいくつか入手したので、Lの値でどのように動作が変わるかを確認してみました。

Dcdc coils1.jpg 左から 500mH, 470μH, 330μH

パラメータがいろいろあるのですが、ここでは、入力電圧を 2[V] 固定、出力電流を負荷抵抗を調整して 100[mA]流したときの出力電圧値を見てみることにしました。スイッチング周波数は、無負荷時に最大電圧が得られる周波数をインダクタごとに設定しました。

L
出力電圧[V]
スイッチング周波数[kHz]
120[μH]
2.8
5.6
470[μH]
2.5
3
500[mH]
5 (但し無負荷)
100

500[mH] のコイルでは出力電圧はさっぱり上がらず、負荷電流を100mA流す前に電源電圧まで落ち込んでしまい、測定になりませんでした。このような極端に大きなインダクタンスのコイルは昇圧チョッパにはおよびでないようです。一番よい特性を示したのは 120[μH] で、大きくても小さくてもだめで、このあたりが最適な値のようです。事実、100[μH]前後のインダクタがチョッパ用には種類も多く出回っているようでした。ちなみに、秋葉原では鈴商に大きなインダクタがたくさん置いてあります。

[編集] 追記(携帯充電器)

2014/3/11

50円で投げ売りになっていた携帯充電器の中身を見てみました。3V →5V に昇圧して充電するものです。

基板

Dcdc shihan2.jpg

コイルを外してインダクタンスを測ってみると、23.3μHと出ました。2Vの昇圧で、数百mA ですとこのくらいの値がちょうどいいということでしょうか。

Dcdc shihan1.jpg

100mA 流してみました。さすが市販品だけあって、電圧はほとんどドロップしません。無負荷でも 5V を維持していました。足が5本ついたデバイスが載っていますのでおそらくそれが制御ICと思われます。ちなみにコンデンサは220μF10Vでした。